投与を受ける患者様、患者様のご家族にとって、常に不安は尽きないものです。少しでも、不安を解消いただくために、私たちは、患者様、患者様のご家族に真摯に向き合い、ご安心していただけるように万全の準備を整えております。
造血幹細胞移植がおこなわれる過程の中で、ドナーの善意を生かしつつ、移植医療が円滑に行われるように移植医療関係者や関連機関との調整を行うとともに、患者やドナー及びそれぞれの家族の支援をおこない、倫理性の担保、リスクマネージメントにも貢献する専門職です。(日本造血・免疫細胞療法学会)
赤血球にA型・B型・O型・AB型の血液型があるように、 白血球にもHLA(ヒト白血球抗原)型があります。HLA型は対になっており、両親から半分ずつを遺伝的に受け継いでいます。兄弟間では、4分の1の確率で完全一致、2分の1の確率で半分一致、4分の1の確率で完全不一致になります。親子間では、100%半分が一致します。他人では、数百万~数十万分の1の確率でしか一致しません。HLAは自分と他人を見分けるために重要であり、造血幹細胞移植では型が一致したドナーを検索していくことになります。
兄弟がいる場合はHLA検査を実施して、一致している場合はドナー候補となります。兄弟のHLAが不一致、または、兄弟がいない場合は骨髄バンクに登録して一致ドナーを検索します。骨髄バンクの一致ドナーがいない、または、調整に時間がかかっている場合にはさい帯血の確保や半合致ドナーの検索、一座ミスマッチドナー検索を行います。HLA半合致移植や一座ミスマッチ移植は、 生着不全(移植したドナー細胞が増えてこない)や重症なGVHD (ドナー細胞が患者の細胞へ攻撃する反応)などの副作用がおこるため、対策を十分に行い移植を実施します。
内容 | 費用 |
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患者HLA確認検査料(SBT法A・B・C・DR座) | 負担なし |
一般血液検査(ドナースクリーニング検査)料 5,000円×4人 | 20,000円 |
ドナー確認検査手数料 3,000円×4人 | 12,000円 |
最終同意等調整料 | 41,000円 |
ドナー団体傷害保険料 | 25,000円 |
採取・フォローアップ調整料 | 49,000円 |
合計 | 147,000円 |
造血細胞移植コーディネーター(HCTC)が血縁ドナー候補との調整を担当します。初診時にドナー候補の情報を確認します。患者さんからドナー候補の方へ「コーディネーターから連絡がいくこと」をお伝えいただきます。ドナー候補へHCTCから連絡をして、健康状態の確認、提供までの流れ・リスク、提供意思の確認をして、調整を始めます。患者さんからドナー候補への金銭授受は禁止としています。(ドナーの自由意思尊重のため)
同種移植は保険適応です。ご本人のHLA検査は移植の保険点数に含まれますが、何らかの事情で移植をしなかった場合、以下の請求があります。
・ドナーとなった1名分のHLA検査、術前・術後検査、採取、入院に関する費用は移植保険点数に含まれるため、請求はありません。(患者様の移植月の請求に含まれます)
・ドナーとして不適合だった場合や何らかの事情で移植をしなかった場合、実施した検査や処置の費用は自費請求となります。後日、北海道大学病院から自宅へ請求書が送られます。
・骨髄バンクのコーディネート費用として、約15万円が必要となります。患者負担金は確定申告の医療費控除の対象です。また、経済状況により免除申請ができます。
・幹細胞の運搬費用として、約24万円(日通利用の場合)が必要となります。こちらは健康保険等の医療費払いの対象となりますので、一旦お支払い頂いたあとに申請すると、後日返金されます。
・ドナーの入院の際に、特室料が生じる場合があります。採取施設により、数万~40万円となります。こちらは骨髄バンクを通さず、北海道大学病院から請求されます。
・臍帯血の確保だけでは費用はかからず、運搬時に約8~10万円が必要となります。(臍帯血バンクの場所によって違います)手続きが進んだら、運搬費用の見積もりが来るまで、準備をお願いします。臍帯血を受ける際に、現金での支払いが必要となります。
・患者検査後に移植中止となった場合、検査費用24,000円の請求があります。
・臍帯血の運搬費は療養費払いの対象となりますので、一旦お支払い頂いたあとに申請すると、後日返金されます。
①健康保険の担当部署で、運搬費用を支払ったことを伝えて、療養費支給申請書を準備してください。(返金額は、保険者によって差があります)
②申請書はご自身で記載してください。
③医師意見書は医事課15番窓口に提出してください。
④支払った費用の領収書と医師診断書、療養費支給申請書を保険者へ提出してください。
「妊孕性」とは、妊娠するための力のことです。
がんに対する治療(抗がん剤、放射線治療など)を受けることで、その治療内容や強度によっては、妊孕性が低下、すなわち妊娠するための力が低下してしまうことが問題となっています。これは男性・女性どちらにも関わることです。患者さんの年齢、病気の種類や病状などによっては、妊孕性温存への対応が必ずしも出来ないことがありますが、北海道大学病院がん相談支援センターやAYA世代支援チームをはじめ、院内外の施設と連携することで、希望される患者さんにできるだけ妊孕性温存療法を提供できる体制づくりを目指しています。
出所:小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究HP
当院で造血幹細胞移植をうけられる患者の皆様は、クリーンルームに入院となります。
クリーンルームは、病室と廊下一帯が特別な空調設備で整えられ、ウイルスなどの病原菌が入り込みにくい環境になっています。
造血幹細胞移植を受ける際には、その中でもさらに空気の清浄度の高い高度無菌室で治療を受けていただくことになります。
入院中の生活 | クリーンルームに生活いただきます。 |
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移植オリエンテーション |
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生活環境について |
治療準備ー生活環境についてー栄養士による嗜好調査を実施させていただき、入院中での安心して生活いただけるように取り込みを行っています。
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行動制限 |
1日でも早く快復に向かっていただくために、行動制限のルールを設けさせていただいております。
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リハビリ |
造血幹細胞移植とリハビリテーションは専門家の指示のもと行ってまいります。
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移植前検査 | 安全に造血幹細胞移植を受けるために、その他の病気や治療に耐えうる体調か確認するために各種検査や受診をしていただきます。 主な検査:歯科受診、内視鏡検査、腹部エコー検査、心臓エコー検査、必要に応じて各診療科の受診 |
社会資源 |
社会復帰に向けて、医療費の相談、利用できる社会資源の相談を行わせていただきます。その際、コーディネート費用、移送日等のお話もさせていただきます。 |
移植前処置について | 治療中は抗がん薬や放射線治療による副作用に対して、症状緩和を行なっていきます。移植治療が開始になると少しずつ食欲の低下や抗がん薬の副作用により食事が取りにくくなってきます。また、食中毒予防の点から避けた方がよい食品が増えていきます。そのため、栄養士と面談を行い食事の内容を相談します。 |
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造血幹細胞輸注について | 造血幹細胞の種類や準備の状況により、移植の時間が決まります。移植中は、心電図や血圧を確認しながら、点滴もしくは注射器で造血幹細胞を注入します。(輸注)輸注にかかる時間は、細胞の種類により数分程度〜数時間と幅があります。 |
感染予防について |
治療開始から造血幹細胞が根付くまで(生着)の期間が、治療中の中で、最も感染症にかかりやすい時期となります。そのため、手洗いや歯磨き・うがい、体を清潔にすることが重要になります。 |
造血幹細胞移植を受ける患者さんには移植前から栄養状態の低下がみられることがあります。
原因としては、化学療法(地固め療法、寛解導入療法)などの副作用による食欲低下やがんがあることでの栄養状態低下、気持ちの落ち込みによる食事量の減少など様々です。移植前に体重が多すぎる(体格指数:BMI30kg/m2以上)ことも、 移植後の合併症を増やすことが知られています。
栄養状態は、体重の変化率と体格指数(BMI)、なかでも標準体重(BMI18.5-25kg/m2 )を維持することが大切です。体重や栄養状態が気になる方は、医師や栄養士にご相談ください。
造血幹細胞移植を受けるにあたり化学療法や放射線療法感染対策のための行動制限など様々な要因で体力低下に陥り廃用症候群となります。廃用症候群とは体調不良となり動かない→動けなくなる状況で移植のみならず高齢者やどの病気の患者さんにもあてはまります。廃用症候群を防ぐには体調に合わせて運動することが必要です。化学療法、放射線療法、行動制限などでおきる、身体機能の低下や倦怠感、精神的心理面の変化は、有酸素運動などの運動療法を行うことで改善されるといわれています。
がん治療・移植治療のために休職し復職を考えている方へ、 「両立支援外来」にて治療と仕事の両立に向けた支援を行っています。
1)方法
がん治療の専門医や看護師・社会福祉士が、主治医や会社のかたからの情報をもとに、治療計画への助言や、復職に向けた助言を行います。具体的には、治療中にお仕事をする上で配慮してほしい事を会社の方へ伝えたり、お仕事との両立を重視して治療計画を立てられるようにご相談ができ、復職の調整を進めていきます。
患者さんのご承諾の上、会社へ仕事の際に配慮してほしいことなど意見書として提供することができます。
2)支援の流れ
①ご希望の患者さんは、治療を受けている診療科医師・看護師に「両立支援」希望の意思を伝えてください。
②担当者が、両立支援の流れ、費用の説明、問診をさせていただきます。その後、問診票・勤め先勤務状況報告書作成の上、面談をさせていただきます。
③支援専門医外来受診後、2回目の時に勤め先への意見書を提供します。その際、「療養・就労両立支援指導料」1回目として800点+相談支援科さん50点を算定させていただきます。自己負担額としては、2,550円お支払いいただきます。2回目以降の指導料は400点算定(自己負担1,200円)させていただきます。
がん治療・移植治療のために退職し復職を考えている方へは、出張ハローワーク担当者との面談を調整し、就職活動に向けた相談や研修受講などの相談を進めています。
セルフモニタリング・ケア | 造血幹細胞移植を受けた後も、さまざまな体調の変化が起こります。そのため、合併症の予防行動や、早めに見つけ早めに対処できるようになるため、予防のための対処行動や体調確認の方法を一緒に確認していきます。 |
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退院後環境の整備 |
退院後も、免疫抑制剤の内服による免疫力が低下している期間がしばらく続くため、感染症に罹りにくい生活環境を整えていくことが大切です。 |
セルフモニタリング・ケア |
LTFU外来について、ご不明な点などございましたら、お気軽にお申し付けください。 |
内服 |
内服に関しては、医師の指示のもと、適切に行ってください。 |
一般的な移植の流れを以下に示しますが、患者さん毎にスケジュールは異なりますので、詳しくは担当医にご確認ください。
(注:病気の種類によっては、治療を行わないまま移植前処置を行う場合もあります)
(注:他の病院から紹介されて来られる患者さんの場合、事前に地元の病院で説明を受ける場合もあります)
(注:輸血のように点滴で移植する場合と、注射器を使って点滴の管から移植する場合があります)
(注:生着の時期は移植の種類、移植細胞数などによって異なります)
(注:起こりうる有害事象のリスクは患者さんそれぞれで異なります)
(注:重篤な有害事象が無いこと、ある程度食べられること、動けることが退院の前提条件になります)
医療情報・生活習慣病予防、がんの早期発見、ワクチン接種など、移植後健康管理の具体的なポイントを明らかにして、移植患者さんの長期健康増進を図ることを目的に、造血細胞移植患者手帳(以下患者手帳)は作成されました。
移植後退院された患者さんの日常生活や社会復帰を円滑に進め、QOLの維持、向上を目的として長期フォローアップを行っています。退院後も外来で免疫抑制剤の調整を行っており、その過程でGVHD(移植片対宿主病)を発症、再燃することがあります。他にも慢性GVHDを含む様々な合併症や感染症のリスクがあります。そのようなリスクに早期に対応できるように問診や看護師による診察を行っています。退院後の生活や日常の些細な体調の変化など、気になることがあれば気軽に相談してください。